生前にできる葬儀の準備——“安心”を整えるためのやさしい第一歩
エンディングノート 2025年12月16日

生前にできる葬儀の準備——“安心”を整えるためのやさしい第一歩

「葬儀の準備」と聞くと、少し身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし近年では、もしもの時に慌てないために、“生前にできる小さな準備”を進める方が増えています。

生前準備といっても、すぐに大きな決断をする必要はありません。日々の暮らしを少し整えていくような気持ちで取り組むことで、ご自身にとっても、ご家族にとっても大きな安心につながります。本コラムでは、そんな“気軽に始められる生前準備”をご紹介します。

生前準備は前向きな「安心のための行動」

生前の段階で葬儀に関わる情報を整理しておくことは、決して重苦しいことではありません。むしろ、「自分がどう生きたいか」「どのように家族に負担をかけずにいたいか」を考えるきっかけにもなります。

例えば、いざという時には短時間で多くの決断が求められますが、それらを事前に少し考えておくだけで、残されるご家族の心的負担は大きく軽減されます。生前準備とは、「最期のため」ではなく、「今の生活をより穏やかに安心して過ごすため」の前向きな行動なのです。

手軽に始められるエンディングノート

エンディングノート

生前準備の中でも、もっとも取り組みやすいのがエンディングノートです。

エンディングノートは法律的な効力を持つ書類ではなく、あくまで“自分の考えや希望を書き留めておくノート”です。気負う必要はなく、書きやすい項目から少しずつ書いていけば大丈夫です。

記入例としては、次のような項目があります。

  • 葬儀の希望(規模や雰囲気、宗教の有無など)
  • 家族や親しい人へのメッセージ
  • もしもの時に連絡してほしい人のリスト(家族・親族・友人・勤務先など)
  • 医療や延命治療に関する希望
  • 財産や契約の一覧(銀行名・保険・日常的な契約など)
  • デジタル情報(スマホ・SNS・サブスク等)の整理

特に葬儀の部分は、「この音楽が好き」「花は明るい色がいい」などの簡単なメモで構いません。ご家族は、これらの“ヒント”があるだけで大きく助けられます。

暮らしを軽くする「身辺整理」——必要なものを大切に残す

身辺整理

生前整理というと「物を捨てること」と思われがちですが、実際には“必要なものを選び直す作業”に近いものです。

日々の生活のなかで自然に増えていった物や資料、写真、デジタルデータを、一度見直して整えることで、今の暮らしが軽くなるというメリットもあります。

例えば、古い書類や不要な契約を整理したり、写真データをフォルダ分けするだけでも、もしもの時の周囲の負担は大きく変わります。また、思い入れのある品物について「誰に譲りたいか」「どう扱ってほしいか」をメモに残しておくことも、心の整理につながります。

あわせて、ご自身が気に入っている写真を一枚選んでおくのも、生前整理の一つです。遺影用という堅苦しい意味ではなく、「この写真が好き」と家族に共有しておくことで、いざという時の迷いが減り、より“その人らしい”写真を使ってもらうことができます。

身辺整理は、無理に一度で終わらせる必要はありません。“できるときに、できる分だけ”で十分です。

家族の安心につながる財産面の準備

財産に関わる準備は難しいイメージがありますが、まずは「どんな財産があるかを書き出す」だけでも、家族にとっては大きな助けになります。

財産面の準備

預貯金、不動産、保険、年金、日常的に利用しているサービスなどを一覧にまとめておくと、もしもの時の手続きがスムーズになります。

必要に応じて、生前贈与や遺言書作成を検討する方もいます。特に生前贈与は、相続のトラブルを避けるための思いやりとして活用されることが増えています。

また、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言保管制度を活用すれば、より確実に意志を残すことができます。「専門家に相談したい」と思った段階で、税理士や行政書士に気軽に相談するとよいでしょう。

葬儀の希望を軽く考えてみる——家族が迷わないために

葬儀の希望

葬儀について、「一般葬」「家族葬」「直葬」など形式を先に決める必要はありません。まずは「どんな雰囲気で送り出されたいか」を考えてみるだけで十分です。

例えば、

  • 花に囲まれた明るい雰囲気
  • 親しい人たちだけで静かに
  • 音楽の流れる式にしたい

など、抽象的なイメージで構いません。

葬儀会館の事前相談では、葬儀の形式の違いや費用の目安、安置場所などの基本情報を丁寧に説明してもらえます。「下見」や「情報収集」といった軽い気持ちで相談される方も多く、相談=契約ではありません。

生前に相談しておくことで、もしもの時の慌ただしさが大きく違ってきます。

困ったときに頼れる場所をつくる——相談先の確保

葬儀の悩み

生前準備の最後のステップとして大切なのは、「困ったときに頼れる場所を確保しておくこと」です。

どの葬儀社に頼めばよいかを事前に知っておくだけで、家族は大きな安心感を得ることができます。自宅から近い式場、希望する規模に対応してくれる葬儀社、事前相談が可能な会館など、いくつか候補を持っておくと良いでしょう。

生前準備は“これからの安心”をつくる時間です

生前の準備とは、人生の終わりを意識することではなく、これからの時間を安心して過ごすための「生活の整備」です。無理に一度で完璧に仕上げる必要はありません。

思いついたタイミングで少しずつ取り組んでいくことで、ご家族とのコミュニケーションが深まり、心にゆとりが生まれていきます。

葬儀や生前準備についての不安や疑問があれば、いつでもお気軽にご相談ください。皆さまが安心して暮らせるよう、私たちはお手伝いさせていただきます。

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